土曜日の午後 Vol.2 Adamlar(大人編)・・・。上
こちらは土曜の午後 Vol.1 Çocuklar( 子ども達)・・・。からの続きです。
さて、子どもたちが行ってしまってから、向かいにある葦が生い茂る沼地へと向かった。
公園から見えるその場所へは細い砂利道が続いている。
対岸から見えていた赤いパラソルのある目的地に着いてみると、防水服を着た男性がいた。
プラスチックのパックの中にもぞもぞ動く生き物がたくさん。
釣りの餌なんだそうで、これからお客さんに届けに行くのだという。
そこにあるもので適当にチャイでも作って飲んでくれ
そう言い残すと、彼はバイクに乗って、行ってしまった。
程なくして、若い男の子と年配の男性が現れた。
手にしていた袋から、ワインの瓶を取り出し、コーラと混ぜて飲み始める。
若い男の子が
お茶飲むかい?
と言ってくれ、そこにあった簡易湯沸かしみたいなものに、そこらへんにある木切れを入れ、火をつけ、湯を沸かし始める。
これが、とても簡単な作りなのに、よく考えられていて感心してしまう。
ここは一体なんなの・・・?と聞く私に
ガリバン(お金のない人という意味)達が集まるところさ・・・誰のものでもない・・・と彼が言う。
チャイが沸くのを待って、彼が話し始める。
「あの子は刑務所に居たんだよ」
「え?!本当に?」
とても人の良さそうな、あどけなさの残る笑顔の男の子が、刑務所に・・・?
「本当なの・・?」
と、その若い男の子に聞くと、
「今、俺は28歳なんだけど、23歳になるまで8年間刑務所にいたんだよ」
と言う。
8年経って23歳というと、15歳の時に入所したということになる。
ある日友達が喧嘩しているところに行ったんだ。友達がやられてて、守るために引き金を引いた。
今となっては行かなきゃよかったと思うよ・・・。
「最後に手前で既に撃たれて苦しんでる奴がいたんだ。それ以上苦しまないように、一発お見舞いしたよ」
合計4人を殺してしまったので、8年入所していたのだという。それがなければもっと短くて済んだらしい。
そんな彼はカフェのオーナーで、結婚もしているのだそう。
「じゃなきゃ、仕事見つけるのは無理だよ」
と隣のおじさんが言う。
「僕らは自由。奥さんも今踊りに行ってる」
にこやかな、人懐こい笑顔で屈託ない話ぶり。
「魚食べないか?俺買いに行ってくるから」
そう、若い男の子が言って、みんなでお金を出し合って、魚を食べようと言うことになった。
すぐに帰ってくるよ・・・と言い残し、バイクで走り去る。
「急がなくていいから安全運転でな〜」
みんなの声が彼を追う。
彼を見送って、また静かになる・・・。
それまであまり話さなかったおじさんが、私たちのそばにきて、
「一つ話をしよう」
と言った・・・。
1972年から1976年まで、付き合ってた女の子が居たんだよ。
兵役が終わったら結婚していいと言う承諾を(両親から)もらってたんだ。
で、兵役に行ってから45日、彼女がさらわれたって話を聞いたんだ。
許しをもらって、兵役から飛び出して駆けつけて行った。
で、相手の男の口に拳銃を突きつけたんだ。
でも、彼女が止めた。
もう終わってしまったことなのよ・・・って。
そう言うと、彼は歌を歌い始めた。
彼女のことを思って作った歌なのだそう。
物静かにワインを飲んで居たおじさんの声は素晴らしくて、しんみりと聴き入った。
「その後結婚は・・・?」
「結婚したよ。それでも、このことはずっと俺を苦しめている・・・。」
淡々と語るおじさん。
生きるということは、簡単なことではなく、様々なことが起こる。特にこの国では、その内容が日本人の私にとっては過激だ。
けれど、そういう国に生まれ、そういう人生を選択し、生きて行く中から、得られる体験、境地・・・そんなものが、人を強く、優しくして行くのだと感じる。
土曜日の午後 Vol.2 Adamlar(大人編)下 へと続く。
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