Sirince シリンジェ村 Vol.2
「Merhaba!(こんにちは)」
とOKANの知り合いに挨拶しながら通りを抜けて、建物が途切れたところから向かいの山に立ち並ぶ家々が見えた。その中にOKANの家もある。
その先をまた進んで行くと、左手にシリンジェのグランドバザールの入り口があり、そのすぐ裏のコナック(邸宅)へと入って行く。美しくリノベーションした、美しいコナック。2階に上がって左が、私たちの今夜の宿だった。
アナトリア特有の美しい細工がなされた、木製の作り付けのタンス。木製の上げ下げ窓からは、向かいにモスクが見えた。
なんと心安らぐ空間・・・木の包容力の大きさに改めて感じ入る。さらに深い平和に包まれる。
ワインとビールで乾杯し、彼が詩を朗読する。
心の底から休まる、こんな時間を共に過ごせていることに深い感動と、そして感謝の気持ちが湧き上がる。
人生でこんなに満ち足りた時間を過ごすことができるなんて、思いもしなかった。
美味しいワインを楽しんだところで、食事へと向かう。
OKANが待ち受けていて、オーナーを紹介される。テーブルセッティングされたところへ案内され、まずはスターターのスープ。
「トマトスープ・・・?」
「いや、これはタルハナ(*1)だね」
とても深い、滋養深い味。そして中央に野草料理。
実はシリンジェは野草料理でも有名なんだという。これも玉ねぎとニンニクを使って調理してあるのだけれど、どうやったらこんな味になるのか・・・。
OKANがワインを注いでくれる。
上品な甘さはなんだろうと思って瓶を見ると、ブルーベリーワインだった。
そしてまた他の野草(根っこと茎の部分?)を使った料理。
どれもこれも、野菜だけどは思えないふか~い味わいで、コックの腕の良さを改めて感じる。
お腹も心も一杯になって、3人で部屋へと戻った。
このシリンジェの建物は保存の規則がきっちりしていて、ドア一つとってもサイズがきっちりと決められているそう。
ドアも昔ながらの開き戸に、鉄の金具。
ガチャリと回す昔ながらの真鍮の鍵。
天井も床も窓も全て木製。
・・・でありながら、壁には最新式の薄型テレビがかかっている。
なんとも言えない幸せで緩やかな連帯感の中で男たちが詩を朗読し、夜は更けて行くのだった。
Sirince シリンジェVol.3に続く。
*1ヨーグルトに玉ねぎや小麦粉、パプリカなどを混ぜて発酵させたものを乾燥させ、保存食として作っており、それを使ってスープを作る。とても栄養価が高いスープ。
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