Sirince シリンジェ村 Vol.5
丘を下り、当初の目的だったバザールへと入ることに。
ここでもおばちゃん達が活躍していて、観光客にトルココーヒーを作っていた。
熱した砂でじわじわとジェズベというトルココーヒー用の小鍋でコーヒーを淹れていく。
もちろんワインの店もたくさんある。
どこも試飲を勧めてくるのだけれど、初めて試飲してみた店で売っていた、ホームメードワインが美味しい。
一旦部屋へと戻り、目が覚めた彼をさっきの丘へと連れ出す。
そこから元来た道を戻り、丘の反対側へと向かう。
左手のちょっと奥まったところの小さな家に目を留める。
入り口にはワインハウスと書いてあり、中には暖炉に火を燃やす男性が。
自家製ワインの美味しいものがあれば、欲しいと思っていたので、中へ入って見る。
かなり大柄で知的な感じの主人が出迎えてくれ、暖炉の脇にあったスツールに腰掛けた。
「これがここで一番人気のワインなんだ」
と試飲を勧めてくる主人(あるじ)。
「それ昨夜飲んだんだけど、ちょっと酸味が強くて・・・」
色々と試飲させてもらうも、全て他の店でも買える銘柄のものばかりで、残念ながらオリジナルのワインはなかった。
自家製ワインで美味しいのを探してるんですというと、彼は黙ってあるペットボトルへと手を伸ばした。
中の空気を減らすために押しつぶされた大きなペットボトルの中に、琥珀色の液体が入っているのを、小さなグラスに入れて差し出してくれる。
芳醇な香り・・・、その液体を口にして驚く。
「これ、ブランデーですよね?!」
数年寝かせた葡萄酒が美味しいブランデーになっていた。
残念ながら、もう残っているだけで、売ることはできないという。
知的な感じを受けたのも最もで、主人は以前森林組合で仕事をしていたそうだ。
色々あって、早期退職して、この場所を開いたのだという。
この17年間のこの国の政治状況には、口にしないにしろ(言えないにしろ)ほとんどの人にとって、共通の苦く苦しい思いがある。
Vol.6に続く
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